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平成不況の本質――雇用と金融から考える (岩波新書)

2012-1-31 — 11:15pm

"平成不況の本質――雇用と金融から考える (岩波新書)" (大瀧 雅之)

たまたま書店で目について買った本。面白くて一気に読めた。

最近は期限付きの契約や派遣で働く人が,身の回りにとても増えている。1985年の派遣法の成立で,法律が低賃金の臨時雇の派遣労働を是認して以来,非正規雇用は増加の一方だ。でも,でも,みんな人間なのよ。日本の中で田畑があるわけでもない生産財を持たないごく普通の国民が,臨時雇いで解雇されてしまったら,失業保険も生活保護のセーフティネットもなしに暮らしていける筈がない。

ちょっと前「蟹工船」が人気になった。派遣労働者や非常勤雇用の増加を考えると理解できる点が多々ある。「蟹工船」に加えて,「賃金・価格・利潤」を読むとさらにいいんじゃないですか,と,思ったことだった。

「平成不況の本質――雇用と金融から考える」は,「賃金・価格・利潤」や「蟹工船」の問題意識に近いところから,現在の日本の経済問題をレビューしている。この本の問題意識は,統計的事実の誤認による世論や,特定の業界の利害誘導によって,日本人の国民生活が維持できないような経済施策が導出される危険を指摘せねば,という点に要約できると思う。

各章では簡単な経済統計の表またはグラフを1〜2点取り上げ,事実に反する社会の思い込みや,特定の利害集団の切り分けを行い,現在の経済問題の背後にある物を解説している。
データも式も単純だし,解説は社会派だから,理解しやすい。

 


私は経済学の素養は全然なくて。経済学に関係する書籍で読んだことがあるのは,学生時代に読んだ「賃金・価格・利潤」や「家族・私有財産・国家の起源」,そしてその周辺の若干の本だけだ。

私にとって,「賃金・価格・利潤」は分かりやすい本だった。出てくる式も単純だったと記憶している。
主に工場労働者を念頭に置いた著作だが,労働による生産は財に新たな価値を生み出す,とか,利潤とは何か,利潤の再分配,大きなパイと小さなパイ。若い頃に読んだ本は,その中の概念もいろいろと思い出せる。
時代は変わっても、あの本は賃金労働者の必読書、と今でも思っている。

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ルワンダ中央銀行総裁日記

2010-11-28 — 11:54pm

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書) [新書]
服部 正也 (著)

私にとっては,今年読んだ本のうちのベストテンに入る一冊です。

初版は1972年のこの本は,1960年代後半に,日本銀行から,建国間もないルワンダ中央銀行に派遣され,総裁として務めた著者の回想だ。

利害を異にする人々の思惑と著者の対応について,具体的なエピソードに基づいて,ルワンダの経済が年々安定していく様子が語られている。
それぞれの新規施策に対して,どういう点に気を配って反対勢力をキッチリ押さえ,自分の意図したことを実現させたのか,という視点で語られているので,ビジネス物語としてすごく面白い。

この本のおかげで,国の経営に対して,中央銀行が長期短期にどういう役割を果たしているのか理解できた。中央銀行の運営も家計の維持も似たようなものらしいとわかったが,国家経営のための経済予測は,百戦錬磨のスペシャリストにこそ,任せられることも理解させられた。

昔の新書だから,タイトルと中身が一致しているし,字数もあるので内容も充実しているし,乱暴な論理の飛躍のない,あくまでも地に着いた書きぶり。読むのが楽しかった。 こういう本をいっぱい読みたいなー。


(最近出版される新書の,やたら大げさなタイトルと,30分も立ち読みすれば内容が把握できるようなスカスカの中身の羊頭狗肉ぶりにあきれて,買ってまでは新書など読まなくなくなったこの頃だ。)

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